船形山からちょっと変です、いまどきのクマ


「船形山のブナを守る会」機関紙の「ブナ通信」に、大和町のKさんから投稿がありました。Kさんは、このホームページにもたびたび登場している人で、山歩きや自然観察においては、私の尊敬する先輩であり、先生でもあります。昨年は船形山登頂200回を記録しています。以下に全文を紹介します。


「ちょっと変です、いまどきのクマ」 

 ブナの森にエゾハルゼミの声が響き渡り、山歩きのシーズンの到来を告げているようです。 
 最近船形山でクマの動きがちょっと気になりましたので、お知らせしたいと思います。
 このところ登山道を歩いていてクマに出会ったという情報をよく耳にするのです。しかも昼日中にです。クマが人を恐れなくなったのでしょうか?
 クマは本来、臆病で慎重な動物といわれてきました。これまでは船形山中でもよほど注意して観察しないと、彼らの痕跡を見つけることは出来ませんでした。それがどうでしょう、去年の秋には登山道に何か所もクマ棚(採餌場所)が見られ、人の歩くところに堂々と糞が残されていました。今まで見られなかった現象です。更に、人がもっとも多く入る日曜日の日中に登山道で目撃されているのです。また冬には12月中旬まで雪の上に真新しい足跡がたくさんついていました。
 昨秋、ブナやナナカマドは大豊作でした。山の中に食べ物がたくさんあったのです。そのことがクマの行動に何らかの影響を及ぼしたのかも知れません。
 このところ新聞などでも各地でクマとの遭遇事故が報道されています。主に山菜採りの方々ですが、我々登山者も同じ山に入るわけですから、何らかの自衛策を考えなければなりません。それには鳴り物を付けて歩くのが一番です。笛や鈴など自然界にない音を出すことによって相手に人間がいることを知らせるのです。
 私もこれまで船形山の登山道だけで7頭のクマに出会いましたが、いずれも鈴を付けていない時でした。
 では運悪く遭遇したらどうするか?私は二つのことを心掛けてきました。動かない、背中を見せない、これだけです。あわてない、騒がない、逃げないと言ってもいいでしょう。これが最善の方法かは分かりませんが、少なくともこれまでの7頭にはお引取り願うことができました。
 山を歩くという事は、彼らの生活圏の中を通らせてもらっているわけですから、常にクマや他の動物のことを意識しながら行動することが大切だと思います。
 山は人間だけの者ではないのです。

 バナナの皮を捨てる前に

 最後に皆さんへの提案があります。
 これまで山の中で食べたバナナやミカンの皮、リンゴの芯などを登山道の脇に捨ててこなかったでしょうか?腐って土にかえるものだから大丈夫、動物や昆虫が食べてしまうからいいだろうと安易な気持ちで捨ててきたのではないでしょうか。私自身思い当たることは、多々あります。
 近年の登山者の数は以前とは比較にならない程多くなっています。その何割かでもこれまで同様捨てて歩くとしたら、その影響は無視できないのではないかと考えるようになりました。
 登山道近くに出没するようになったクマとそのことを結びつけるのは、あまりにも短絡的な考え方かもしれません。しかし、我々は単にゴミとして捨てたものが、クマなどの動物にとっては餌となってしまう可能性は十分あります。そうなれば、捨てた本人は意識しなくても「餌付け」ということになってしまいます。
 クマに人間の食べ物の味を覚えさせないことも、遭遇事故を防ぐための方策のひとつです。
 ゴミは捨てずに持ち帰るという山歩きの原則は、山を汚さないと言うことに止まらず、人と動物の関係においても大切なルールなのではないでしょうか。


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