船形山ブナ通信  2012年5月26日号

                                       『船形山のブナを守る会』
 


 
 5月20日に二次林観察会を27名の参加で開催しました。
商人沼二次林とは明治から大正時代に伐採された73haの広さの森です。
当時の作業はチェーンソーなどの機械や運搬の重機はありませんので、
のこぎりなどを使っての手作業で、20年〜30年かけて伐採されたようです。
伐採の仕方は皆伐(対象となる区画にある森林の樹木を全て伐採すること)
でしたが、一年間に切る広さが4〜5ha程度ですので、ブナ林の再生がた
やすかったのでしょう。
先人の森の復元への思いや手法を100年経た現在でも感じさせてくれ、
まさに見事に再生したブナの純林の商人沼二次林でした。
  商人沼二次林標識
報告として参加された皆様の「一人一言」の内容を以下に掲載しました。

司会・Sさん:思う存分ブナの森を歩かれて充分に林の中の新鮮な空気を吸い
        こんだと思いますが、皆様のブナへの思い、体験したこと、感じたことなど自己紹介
        を交えてお一人ずつお願いします。まずは私から始めますが名取市から参りました
        Sと申します。一見若造には見えないでしょうが来年80歳です。今日は本当に楽しい
        山行でした。皆さんと共に二次林を充分堪能してさわやかな気分で帰宅できると思います。

Wさん:会の行事にはずっとご無沙汰していました。二次林、商人沼とも気持よかったです。
    また参加したいと思います。

Oさん:昨日は月山の近くの肘折温泉のブナ林へ行きました。あちらのひねくれたというか
    虐げられた姿のブナと比較すると、こちらは素直に育ったようなブナ林と感じられました。

Mさん:この二次林は3回目、商人沼は2回目ですが今回の二次林は残雪があって軟らかい緑との
     コントラストに感激しながら歩きました。今日の30名限定の枠から漏れた方々はこの情景を
     味わえなくて気の毒かなと思いました。

Sさん:普段見慣れているブナの林と違ってこのような若いといっても100年だそうですが、素晴らし
    い林の眺めでした。升沢の旗坂へ行く途中も伐採されていますが、このような林の姿に復元
    されれば良いなと思いながら過ごしました。

Tさん:ブナの二次林はたびたび見ることがありますが、どこでもいつも感動しながら素晴らしさを感
    じています、ここの林は秋になったらきっとすごい黄葉で綺麗だと思いますので是非皆さんも
    う一度おいで下さい。

Oさん:ここは11年前のブナの会に入って間もなくの頃に来たことがあります。当時の私にはブナの
    二次林という意識は掛けていたと思いますが、改めて眺めてみると11年前に素晴らしいところ
    に来ていたんだなと思いました。また地図上で見ると丸の印のされている商人沼に来たと実感
    出来、感慨深いものがありました。

Sさん:体調が悪かったのですが今日はどうしても来たかったので、昨日などは熱が上がらないように
    したりして、何とかここに立つことができました。皆さんも経験あると思うのですが、病んでいる時
    とかにブナの中を歩くと体の芯ができるというか、ブナの中は癒しの効果があるというのを身を
    もって体験しました。2001年5月27日にOさんに連れられてここを歩いたのですが、その時にブナ
    の二次林に魅せられてこの会に入った訳です。あの時にこの林が80年と言われたのが記憶に
    残っていまして、今回は90年ということでこの10年の歳月を感じて見させていただきました。
    この10年で自分の何が変わったのかというとピークを目指す山登りから、今は森の中を皆さんと
    語らいながら歩くのが本当に良いなと思うようになりました。

Gさん:去年は中新田の避難先から船形の山行に連れて行ってもらい、今年は志津川の仮設住宅から
    この会に参加しました。仮設では体を動かすことが少ないので、震災太りというかメタボなってい
    るのでその解消に参加しました。震災そのものは自然のすさまじさというか恐ろしさを感じさせら
    れましたが、今日は自然の包容力の豊かさや心をなごませてくれる素晴らしい自然を見させてい
    ただきました。

Sさん:こんな近くに素晴らしい森があることを初めて知りました。ここを通り過ぎることはありましたが森の
    中を歩いたのは初めてでした。今日は空の色がブルーで幹が白で若草色が癒される色でした。

Kさん:この山へは秋に妻と時々入ったりしていました。途中でOさんとバッタリ会ったりしたこともありま
    した。今日もまた笑った春の山や、芽吹きの中を歩くことができて大変幸せを感じています。

Sさん:ブナの新緑が素晴らしく、また天気が輪を掛けて良かったので非常に印象に残りました。
    昨日も天気が良く風が強かったけれど升沢から氾濫原に行きました。ニリンソウが花盛りでした。
    こんなに沢山イワウチワをじっくり見たのは初めてで、素晴らしいと感じました。イワカガミと土壌の
    相性が違うのかなとも思いました。

Sさん:二次林は初めてですが、歩き始めからイワウチワが咲き、私のようにすらっとしたブナ林を見る
    ことができ非常に感激しています。たっぷりエナルギーをもらったのでまた1週間頑張れるような気がします。

Hさん:11年前にこの二次林に来たということ、11年間真っ直ぐに育っていて素直さがすごいと思います。
    若いブナが白くて色っぽいなと感じています。秋田とかの太い木は苔むして黒っぽくなるのですが、
    ここの二次林のブナの木は色っぽいなと思っています。Oさんのお話では100年前にここの材木を
    山形側の尾花沢の方へ運んだと聞き、漆沢へ運んだのではないことを知りました。

Tさん:表現し難い素晴らしいブナの色を見られて良かったと思いました。また自然観察会でOさんご夫妻に
    色々勉強させていただいてありがたいなと思いました。

Oさん:今日はリーダーということでしたが、皆さんのご協力でほぼ予定通り歩くことができました。
    イワウチワについては例年はもっと多いのですが今年は少ないようです。先程お話に出ましたが
    イワカガミはもっと高い所、イワウチワは低い所という違いがあります。ここは秋、10月の20日頃の
    黄葉がすごく綺麗です。国道からすぐ傍ですので是非また見てもらえればと思います。

Tさん:先程ブナ二次林が色っぽいという話があったのですが、私も歩きながら何ともなまめかしいというか
    色っぽい林だなと思っていました。でもブナに色っぽいというのも“変態っぽい”かなと思っていたの
    ですが、他にも同じ意見がありましたのでほっとしました。

Mさん:素晴らしい二次林の新緑と残雪そして時折上を見上げると入道雲が見えたりし、夏の装いをちょっと
    感じることができました。素晴らしいレクチャーを受けながらの山歩きは非常に楽しくて、商人沼での
    観察も初めてでしたので貴重で有意義な一日でした。

Iさん:素晴らしい二次林でございまして、また明日からの仕事に精が出るなという気持ちになれました。

Iさん:私もここは初めてですが、ブナの二次林の素晴らしさと、商人沼の水面の雪が半分溶けた情景、
   初めて見ましたがとてもよかったです。母ちゃんに言わせるとひねくれている心が今日はちょっと治
   ったかなと思います。

Mさん:男性の方々からブナの色っぽいという話が出てきましたが、私もこうして見ていると肌の白さと、
    光を通す葉を見ながらまぶしくて羨ましいなと思っていたところでした。

Oさん:よく見るとブナにはシワもあるしシミもあるし肥満気味もあり色々なようです。きょうのキーワードは
    ブナと残雪と男と女ということで、歩きながら「これなあに」と聞かれると「これはフキのオスだよ。
    こちらはメスだよ」とか「ブナの花にもメスとオスがあります」とか言いながら歩いて来ました。そうしたら
    皆さんの反応は植物の名前を教えられるのよりはそっちの方がよほど楽しくて心に残るということでした。

Wさん:ゴールデンウイークの最初の方に船形山へ行ったのですが、今年雪の上を歩くのはこれが最後かな
    と思っていたのですが、今日は思いがけなく雪の上を歩くことが出来、やっぱり雪の上を歩くのは気持
    ちが良いなと思いました。100年とか10年とか言う単位でお話があったのですが、自然界では10年
    100年というのがまたたきをするような一瞬なのでしょう。人間が感じるような時の流れとはまた違う
    流れ方をしているんだろうなと思いながら、この気持の良い森の中を歩かせていただきました。

Iさん:今日の観察会の案内に「先着30名」とあり、どうも早い者勝ちとか先着順という言葉に弱いもので、
   その日のうちにメールで申し込み30名の中に入れてもらいまして本当に良かったです。今日はこの素晴
   らしい緑と青と白と、すがすがしい空気を体いっぱいに吸いました。明日から元気に頑張っていけるかなと思います。

 
Tさん:この二次林は2回目。以前訪れたのは11年前ですがその時に二番目の息子を連れてきました。
    その子は当時10歳で小学5年生でした。現在は大学を卒業して一人で東京に居ますが、それだけ大きく
    なったということです。11年前に歩いたブナ林と今日のブナ林は余程変わっているのかなと思ったら変わって
    いない訳です。ブナにとっての10年と私達の過ごしている10年のスパンというかその長さを感覚として
    捉える時間の長さには、大分違うものがあるんだなとつくづく思いました。今日はただ歩くということではなく
    残雪と新緑とコントラストが見事なところへ寄り道して来ました。案内の方、下見をしていただいた方にとても
    感謝したいと思います。

Tさん:俳人を前に一句詠みたいと思います。
   「鍋越の五感にしみいる新緑の色」

事務局A:一人一言が始まる前にお断りしなければならなかったのですが、今日この雰囲気をブナ通信に
    載せようということで只今まで録音していました。事後承諾の形になりますがご了承願います。
    感想としては11年前の林と今日の林とでは直感的には変わりはないけど、どこかが変わっているのかなとも
    思いました。花は毎年同じように咲きますが、それを眺める人間は同じではなく、一年一年変わっていきます。

司会・Sさん:これで全員ですね。一句ご披露して「一人一言」を終りとします。
   「二次林の梢に若葉青い空」
商人沼集合写真

事務局 注) *話し言葉を書き言葉に置き換えています。
          微妙なニュアンスの差があるかと思いますがご勘弁願います。


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【 寄 稿 】     県警ヘリコプター出動にみる入山届の重要性
                                    大和町 C葉 B彰

平成24年5月4日、私たちのゴールデンウィーク山行の終末は、県警ヘリコプターの出動と
パトカー3台、警察官6人の下山出迎えでした。
この騒動の最大の原因は入山届の未提出であり、同様の事案を繰り返さないように、また
自分たちの身を守る意味でも入山届の大切さを痛感しました。そこで、事の顛末を皆さんに
も知って頂き、今後の安全・安心・万が一の際の事故拡大防止の参考にしていただければ
と思います。
5月3日朝、ブナ平テント泊の計画で旗坂登山口に5人のメンバーが集まりました。当日は列島
を広範囲に低気圧が被い大雨の様相でしたが、行き先を升沢小屋に変更し、「雨も天気のうち」
とか「大雨のブナ林を見られるのは大雨の日に山に入った人だけ」などと呑気に構え、入山届も
提出せずに1泊2日の山行へと出発したのでした。
下山後に知ったのですが、この日は大雨洪水警報が発令され、麓の大和町では500人に避難
指示が出されていました。北アルプスでは8名もの方が亡くなるなど遭難事故が多発した日でも
あります。
夜間は大雨と強風で大荒れでしたが、小屋の中は快適で朝まで熟睡。雨が上がった2日目は
升沢小屋から鈴沼へ約1時間で行けるバリエーションルートの確認に出かけるなど、我々にとっ
ては何事も無く山を楽しんでいました。
14:00頃、小屋を出る時にT氏の携帯電話に着信がありましたが、電波状態も不安定であったため
通話をせずに下山開始。小屋を出て10分後、標識9番から10番の辺りで宮城県警のヘリコプター
が頭上を旋回。3周目に高度を下げ外部スピーカーでなにやら呼びかけて来たのです。爆音で
内容ははっきり理解できませんでしたが、出動の目的が我々であることだけは分かりました。そこで、
先ほどの着信との関連を考えT氏が確認。都合良く携帯電話が通じるポイントであったため、発信者
である奥さんと通話が可能で、おおよその概要を知ることが出来ました。
地すべりによる旗坂〜升沢間の県道の一部崩落と、昨日の大雨とが相まって登山口駐車場に停
めっ放しであった3台の車のパーティーが山中に取り残されている可能性を考え県警が動いたと
いう訳です。それで、ヘリの2度目の旋回時には呼びかけの内容も大体理解することが出来、日没
前の自力下山可能を手信号で伝え、ヘリは帰還して行きました。急ぎ足で旗坂登山口へ戻ると
大和警察署から6名の警察官の方が我々の下山確認の為に待機して居られました。心配と手数を
かけたことをお詫びするとともに状況を説明したのですが、にこやかに何事も無く良かった、お疲れ
様でした、との対応には本当に恐縮至極の心境でありました。
後日、県警の地域課へお詫びと状況報告の為電話を入れ、担当の方と話をさせていただきまし
たが、今回の騒動の一番の要因は入山届の未提出であったと思います。言い訳がましいのですが、
過去の泊まり山行の際は必ず入山届を提出していました。行動予定やメンバー構成、緊急連絡先
に加え、行動概念図・持参装備・予想される危険と回避方法まで記載した詳細なものです。今回は、
仕事も多忙で計画書作成の時間を惜しんだことが一番ですがA5月であり冬期間は終わっている
との認識B危険箇所は特に無いと考えていたことC行き先が升沢小屋であったことD装備も十分
であり体調の変化にも対応できると考えていたこと等、勝手知ったる地元の山という感覚で、届出
ポスト備え付けの用紙にも記入投函しなかった次第です。
しかし、事後に客観的に考えると、これは誠に自分たち本位の考え方であります。当事者(家族)以外
の知り得る情報は、悪天と道路崩落そして駐車場に前日から置きっ放しになっている3台の車、たった
3点の事実だけです。何の情報も無い中で考えられる最悪の状況を想定すれば、県警が動き、車の
所有者宅へ訪問や電話での情報収集と並行し、ヘリコプターが出動するというのも当然のことだと思います。
県警の方の話では、あくまでも民間の場合との前置きはありましたが、ヘリコプターのフライトには目安と
して1分1万円の経費がかかるそうです。と言う事は、我々も数十万円の大切な税金を使わせて頂いたと
言う事です。
以上のことを踏まえ、自分はもちろん、この文をお読みになっている皆さんにも、たとえ日帰り登山であっ
ても山菜採りやキノコ採りであっても入山届の大切さを再度確認して頂きたいと思いました。昨年来「想定
外」という言葉には嫌気が差す感情を持つ私たちですが、山に入れば、転倒して動けなくなる・体調が急
変する・天候が急変する等々、さまざまなアクシデントは十分考えられる「想定内」のことで、何かの際には
第3者にも分かるよう出来るだけ多くの情報を残しておくことが大切です。入山届の提出を心がけるよう努
めて頂き、これからも安全・安心で楽しく山と関わって行けることを願っています。
大和町管内では、登山口の届出ポストのほか大和警察署、吉田駐在所、冬期(11月〜5月)届出所(宮城
交通 沢渡バス停脇)への提出が可能です。大和警察署のホームぺージからは、地図も記載された入山
届の雛形をダウンロードすることも出来ます。


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皆様の熱い想いとカンパを頂戴いたしありがとうございました。
(名取市)S木Hさん  (宮城野区)H郷S子さん  (泉区) M浦Kさん
(福岡市)MS二さん  

【カンパのお便り紹介】
 いつもブナ通信を送って頂いて、楽しみに読ませてもらっています。
 今年は冬が長く感じられました。が、私は冬の景色が好きなので、葉を落とした木々の枝の美しさや、
 遠くまで見通せるうれしさを楽しみました。
 毎日我が家から大山から続く丹沢の山々をながめていましたが、最近はあまり見られません。
 秋になるまで我慢です。
 今年は丹沢の雪も例年より多かったいせいで、高尾山から蛭ヶ岳の左下方に「白馬」の雪形を見る
 ことが出来ました。月日のたつのが早くて気付くと一ヶ月が終わってしまいます。いつまで丹沢の山々
 を歩いていられるのか不安な年令になりました。体に気を付けてお荷物人ならないよう生きたいものです。
 少しですが通信費を同封させていただきました。
                                     (東京都町田市)H田M子さん


 会員でもない私に毎回「船形山ブナ通信」をお送り下さりありがとうご座居ます。毎回の山行、観察会、  
 寄稿文楽しく読ませていただいております。東北の冬山の光景、体験したことはありませんが、あれこ
 れ思い楽しみました。
 東日本大震災。原発事故の国の復興計画もテレビ、新聞で知る限り遅々として進んでいないようですね。
 心が痛みます。一日も早く平穏な震災前の生活に戻ることを祈願します。切手同封しました。
                                    (神奈川県小田原市)I本T郎さん

【 事務局より 】 「船形山ブナ通信」のEメール送信をいたしております。
 hunagatabuna@vivid.ocn.ne.jp

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HP管理者 注)寄稿いただいた方、カンパいただいた方には恐縮ですが、インターネット上の事ゆえ
         お名前は匿名とさせていただいています。(イニシャル間違っていたらごめんなさい)

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