「船形山のブナを守る会」は、1985年4月に発足しました。
青森・秋田県の白神山地、青秋林道建設の反対運動がきっかけでした。
山小屋で山登り仲間が、ローソクの灯りを囲み酒を酌み交わしながら
「白神へカンパすれば、それで済むことではない。
自分達が慣れ親しんでいる船形山はどうなのか」の問い掛けが原点でした。

 
かつての船形山は全山鬱蒼としたブナの森に覆われていました。
樹林が濃いため見通しが効かず「ヤブの山」といわれ、一般の登山者からも
敬遠されていたほどでした。しかしその後、林道が全山に入り込みブナ伐採が行われ、
緩斜面の多い船形山系はブナが豊かであると同時に、林道がつくりやすかったのです。
伐採もしやすく縦横に伸びた林道の密度が、宮城県の山系の中で最も高くなってしまいました。

 活動の中心には「ブナを見る山行」を据えています。
ブナの森を見たことのない人々に実際に山に入ってもらい、伐採跡地や植林地の荒廃の様子と、
ブナ原生林の素晴らしさや美しさを同時に体感してもらっています。
太古のブナに身を置きうっとり目を閉じたり、ときに伐採跡地で激昂のあまり涙ぐむ女性もいました。
四季折々のブナ林の美しさや、楽しさ、厳しさを自分の足で大地を踏みしめながら感じてもらいたい、
というのが私達の願いです。ときに雪山のブナ林山行を計画することもあります。
そんなときの参加者は、寒さや登りの苦しさも忘れて童心に返って雪と戯れています。

 私達の運動の原点は「山登り」です。苦労を厭わず頂上に達して眺めやると
山麓や里山、川、平野や町、そして海が見えます。山頂を覆う霧が一滴の葉露となり大地に落ち、
沢となり川となり海にそそぎます。そして、その途中のいたるところに人々の営みや生活があります。
同じように「ブナを守る運動」を通してすべてのものが見えて来るような気がします。
ブナ問題を唱えるとき、ただ単に「山が荒れている」「ブナが無くなった」
「林野行政が悪い」といった指摘だけでなく、「それならば自分たちの今の生活はどうなのか」
という反省の上で生活を見直しています。豊かな森林は栄養豊富な水を提供してくれます。
ならば私たちは、その水をできるだけ汚さずに海まで送り届けなければなりません。
生活の在り方が問われています。水、空気、エネルギー、ゴミ・・・そして利益、経済、効率至上主義。
その中に押し流され続ける私たちの「こころ」・・・・・全てが関わってきています。
ブナを通じて世を問い直してみたい。きっと明日が見えてきます。」

 会の運営は、世話人会で進められています。特に世話人の人数や資格についての取り決めはありません。
そのつど集まれる人に寄ってもらい、これからのことを企画してもらいます。
会費や会則もありません。あるのは「このままで良いのか、なんとかしなければ」という
「ブナへの想い」だけです会員の資格もありません。
事務局に寄せられた便り、ブナを見る山行、集会に参加された人達の名簿で会報が発送されます。
現在は約200名ほどになりました。
運営費はこうした方々から寄せられたカンパや、機関誌の代金で賄われています。

 一度、船形山を訪れてみてください。
そこには何百年も生き続けている雄々しいブナの姿があり、その森から湧き出る水をはじめとする
様々な恩恵を頂きながら私たちが生活していることが実感できるでしょう。


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