テント泊と花染ブナ林の便り

ゴールデンウィークも終盤の5月5日〜6日にかけて、船形山にテントを担いで行ってきました。
小屋の管理人なのになんでテント?って思われるかもしれませんが、今回はある目的があったから・・・。

5日はゆっくりめに家を出て、9時半ころから登山開始。登りはじめの旗坂平までの道にはスミレなどが咲き、春山登山の様相です。ブナも新芽を出していよいよ船形山でも私の一番好きな新緑の季節の訪れです。一群平を過ぎ鳴清水付近まで来ると、残雪があり雪上歩行となってきます。まあ、普通の残雪登山の訳なんですけど、今日は泊まり装備一式とテント、それに無線設備も一式持って来ているので、ザックの重さが肩にくい込んできます。無線遊びも楽しもうと思ってザックに入れた2個のバッテリーが重いこと重いこと!ビールや食料は無くなれば軽くなりますが、バッテリーだけはカラになっても重さが変わらないので、下山までこの重さに耐えなければなりません。

 

 

 

途中の三光の宮付近にテントを設営し荷物を軽くします。小屋泊まりせずにここにテントを張ったのにはいくつか訳があります。まず第一は2日目にあまり歩かずに、午前中ダラ〜っと過ごしたかったから。早朝から少し周辺を歩き回って、おなかを減らして帰って来てから食事して2度寝。(これが気持ちいいんだよね〜!) それと無線遊びするには山頂が一番ですが、前述の理由により今回は山頂泊まりはパス。升沢小屋はあまり無線のロケーションが良くなく、三光の宮のほうが電波の飛びが良いからです。

 

 

 

 

三光の宮からは荷物も軽くなり、普段通りの船形登山となりました。前々週にKさんから教わった三光の宮から升沢小屋までの最短ルートを歩きますが、そろそろヤブが出てきて、ここを歩けるのは今年は今回が最後のようです。升沢小屋上部は沢が雪で埋もれていますが今年は積雪量が少なかったせいか、小屋を出てからすぐのところはすでに沢が現れており、雪の上を歩いて渡れるのもあと少しのような感じです。沢を登っている途中で山頂帰りの多くの人とすれ違い、最後の方と会ったのは沢の二股の手前でした。升沢小屋でも知り合いと逢いしばらくしゃべっっていたので、もう時間は2時近くになっていました。千畳敷を過ぎて稜線近くからは夏道が完全に現れており、一気に山頂小屋に到達することが出来ました。2週間前にホワイトアウトの中を升沢小屋から千畳敷を一直線に雪田を縦断して小屋に向かったルートはもう歩くことが出来ません。こうしてみると季節の移り変わりって早いものですね!山頂の小屋で約1時間の無線遊び。4時頃から一気に升沢小屋まで下山。小屋には私の高校・大学の同級生であるMCさんが泊まる準備をしていて、1時間近く話し込んでしまいました。彼とは朝日連峰や飯豊なども一緒に歩いたことがある気のあった山仲間でもあります。


5時半近くになって小屋を出て、6時頃にテン場へ到着。早速夕飯の準備に取り掛かります。今日の夕飯は納豆餅です。思いつきでスーパーで切り餅と納豆を買ってきたのですが、これが自分ではヒットでした。鍋に水のうちから餅を入れて沸騰したら火を止めて2分たったら出来上がり!カップラーメンより早くできます。それを納豆のパックにからめていただきます。簡単だし、腹持ちもいいし温かくて美味しいし・・・。
テントの中から少し無線遊びしましたが、さすがに疲れたのか早々に切り上げ、ちょっと外に出てみると風はあるものの、キレイな星空が広がっていました。

 

 

 

6日は5時ころ起床、雪の上のテントでしたがあまり寒さも感じずけっこうぐっすり眠ることが出来て目覚めもすっきり。早朝の三光の宮からの風景を楽しんで、2日目の目的である花染山方面に向かいます。花染山から三光の宮のコース(登山道はありません)は何度か歩いたことがあるのですが、その時から気になっていた花染山稜線の南斜面、小荒沢減頭部にかけてのブナ林の中を歩いてみたかったのです。
三光の宮から北東方向へ下りて行くと、花染山からの尾根に出て、そこをしばらく歩いて雪庇の切れているところから沢の方へ下りることが出来ます。

 

 

 

そこは思った通りの見事なブナの純木林で、ほとんど人が入ることが無い原生林ですからコモシカの足跡がいたるところに残っていました。
源頭部で一部沢が露出していたところがあったので、沢に降り立ち朝の洗顔、残雪の下を流れてきた源頭の水はきれいでキリリと冷たく、心まで洗われる想いでした。コーヒー用に水を汲んでからブナ林の中を歩き回りましたが広々としたブナ平で、けっこう巨木も目につき、手を回して計ってみるとおよそ胸高回りで約4mほどのブナもずいぶんあるみたいでした。誰もいない山の中で、一人でブナの巨木に抱きついている姿ってかなり異様なんじゃないかな?って思いますが、これが幸せを感じるんです!そして何百年と生き続けてきたブナから自然の命のパワーを分けてもらえるような気がします。しばらく歩き回っていたら、樹齢400年はあろうかと思われる巨木が2本並んで立っていました。いかにも山の精霊といった雰囲気の巨木で、樹齢を重ね両方とも幹はゴツゴツしていて途中から太い枝も折れ、世代交代を待っているような老木であり、次代の精霊となるべきブナが現れてくるのを2人並んで見守っているような気がしました。花染山の北斜面と南東斜面はブナが伐採されてしまい植林地となっていますが、この2本の老木の間に立つと、ここの周辺のブナはその2本が守ってくれていたのではないかと思ってしまいます。
自然への畏敬、山の精霊、自然保護・・・ここのブナ林の中を歩いてみて改めて考えさせられることでした。そして、こう思いました「みんなも来てみればいいのに・・・」

 


山頂はこんな感じ 三光の宮から船形の夕照 小荒沢源頭部
花染ブナ林の中で 旗坂平付近の新緑 オオカメノキも花が咲いていました

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