船形山 朝日沢源頭遡行の便り

9月23日〜24日と船形連峰の漆沢上流部「朝日沢」の源流探索に行ってきました。メンバーは山岳写真家のH川さんと岩魚釣り仲間のT山さん、そして私の3人です。

朝日沢は漆沢ダムのバックウォーターで、ダムから上流に向かうと沢は二股に分かれ、左手(東側)が夕日沢で右手(西側)が朝日沢です。どうして東が夕日で西が朝日なのかというと、朝日に照らされる西側が朝日沢で夕日に照らされる東側が夕日沢という訳です。

今回は夕日沢林道を使って標高700m付近からヤブを漕いで沢に降り、沢の途中で1泊し、そのまま源流を詰めて標高1250mあたりで尾花沢市からの登山道(クラビコース)に出て、稜線上の御来光岩を通過し小野田コースを下山するという計画です。地形図での確認、クラビコースを下っての下見の結果それほど急峻な沢ではないので、まあ足回りさえ装備しておけばそれほどの沢登り重装備は必要なさそうです。

行程的にも無理するほどではないので、23日の朝はゆっくり9時に我が家に集合しスーパーで買出ししてから現場に向かうことにしました。小野田コースの下山地点に車を1台デポするのでH川さんのプラドとT山さんのジムニーの2台で出動です。薬来山の麓、水芭蕉で有名な荒沢湿原の前を通り林道に入りますが、この林道の長いこと・・・この林道は船形山の小野田コースの登山口に通じているのですが、この林道走行の長さから小野田コースを歩く人はとても少ないみたいです。太くきれいなブナに囲まれたとても良い道なんですけどね。

12時ちょっと過ぎに入渓地点に到着。わずかな踏み跡の残る林のなかを横切りいよいよ朝日沢の沢床に降り立ちます。ここは年に1回くらいは来ていますが、いつもやさしいブナときれいな沢に心が洗われる思いです。今回の主目的はイワナ釣りではないので、まわりのブナ林を眺めながら快適な沢歩きを楽しむ事にします。いいポイントでは竿を出したくなりますが、早めにテン場を決めてからゆっくりしようと言うことで、そこの落ち込みだったらここでアタリが出るよな、とか、あそこの瀬だったらここで・・・なんて頭の中での釣りを楽しんでいました。

 

 

 

 

 

 

3時前には良いテン場を見つけて早速小屋掛けにかかりました。今回はH川さん特製の超軽量かつ超簡易宿泊施設での泊まりになります。テントと違って外の空気とふれあいながら、このすばらしいブナ林の中で泊まることができるのです。

テン場の設営が終わったところで、それぞれに竿を手に今晩の宴のおかず集めです。途中でカノカ(ブナハリタケ)をちょっと採ってきたので、きのこ汁にイワナの塩焼きが今晩の食事となります。これからイワナも産卵期に入るので、一人2尾ずつのキープにとどめました。日も暮れてあたりが暗くなりはじめる頃、焚き火に火を入れ沢中宴の始まりです。ビール、日本酒、ウィスキー。日本酒はイワナの骨酒にしていただきます。この骨酒なんですけど、家で飲むのと現地で飲むのでは何故こんなに味が違うの?と思ってしまいます。もちろん塩焼きにしてもそうなんですけど・・・。

焚き火を囲み酒を飲みながら、それぞれの自然に対する思い、人間に対する思いなど語り合うことにこのうえない幸せを感じます。今日の3人は年齢も職業もばらばらですが、歳も社会的な立場も何も関係なく一人の人間として語り合えるってのはいいですね〜。ましてこの山のなかで。
ほどよい酔いと疲れで、シュラフにもぐり込んだら1分も経たないうちに寝入ってしまったようです。夜中に一度目を覚ましたものの、平日の倍近く眠ることが出来た感じで翌朝は目覚めすっきり、昨日の疲れもほとんど感じません。ヤマ屋の朝は早いとよく言いますが、我々はマイペース。私が起きたのは6時を回っていました。今日の行程を考えれば、早発ちする必要もありませんから、ゆっくり朝食を摂って8時半に出発ということにしました。私は山小屋でも行程を考えて朝は時間配分するようにしています。山では何が起きるか分からないので早発ちに越したことはないのですが、半日で歩ける行程だったら何も無理に早発ちせずに、空気のきれいな山の朝をゆっくり楽しむこともいいんじゃないかなあ〜って思います。

今日は全行程の3分の2を残しているので、イワナのいいポイントにも竿を出さずに上流を目指します。1時間ほど遡行すると日帰りではなかなか来ることが出来ない、つまり人がほとんど入らない原生林のなかの沢歩きとなります。心配していた天気も問題なくって言より素晴らしい青空に恵まれ、足元を流れる沢音、沢から突き上げる急斜面にはウメバチソウの群落そして稜線には青空をバックにしたブナの大木とこれ以上の環境はないんじゃないかと思うほどの風景を楽しむことが出来ました。

股を過ぎて最源流に近づくにつれ水量も減り、まわりのヤブがうるさくなってきましたが稜線は近い証拠です。ほとんど水のなくなった沢床から5分もヤブを漕がずに登山道に出ることが出来ました。刈払いがしっかりされた気分の良い登山道から御所山(船形山を山形県側からはこう呼びます)の展望がきれいです。最後の急登を頑張って御来光岩に到着。紅葉のピークには1週間ほど早いような感じでいたが、ドウダンやミネザクラの葉は色付き、すっかり秋の気配を感じる山頂付近でした。

2時半くらいに下山開始、一気に色麻コースを下って途中で鏡ケ池によりしばしの休憩、その後はブナの巨木に囲まれた小野田コースを下山口に向かいます。このコースは最初にも書きましたが、本当にブナの単相美林です。胸高で直径70〜80cmあり、その大木が空に向かってまっすぐに伸びて、樹高は40〜50mはあるのではないかと思います。まだ歩いたことのない方には絶対お勧めのコースです。

沢泊まりの山行は今年はこれが最後になると思いますが、天気・沢・イワナ・原生林・キノコ・ちょっと早い紅葉・ブナの美林・そして素敵な仲間(先輩)に恵まれた本当に楽しい2日間でした。そして、この船形山の魅力をあらためて深く感じさせてもらうことが出来た2日間だったと思います。

 

 

 

 

源流部のイワナ。イクラをチョット湯がいてしょう油を
かけると・・・もう・・・絶品!・・・
両岸の稜線上のブナ 青空との
コントラストがとても綺麗でした。
ほとんど水もなくなってきた最上流部 源頭を過ぎれば稜線は近い

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