升沢遊歩道から春の気配の便り

3月12日、船形山山麓の升沢遊歩道のスノートレッキングに参加してきました。大和町の「たいわ体験観光推進協議会」主催のさまざまな体験を通して大和町のよさを知ってもらおうという行事の中のひとつで約20名の参加者が集いました。私は船形山周辺をいつもウロウロとほっつき回っている実績?を買われて、なんとインストラクターという、たいそうな肩書きでの参加です。大和町委託の船形山山頂小屋管理人コンビのK先輩も一緒なので心強い限りで、たいした話もできない私ですが何とか参加者の皆さんには楽しんでいただくことができたようです。
あいにくの曇り模様でしたが、スノートレッキングは初めてという参加者も多くスタート起点の宮城県内水面水産試験場へ向かうバスの中では、総合インストラクターのAさんやK先輩そして私の話などでこれから始まる雪山体験への期待は大いに高まります。

升沢遊歩道は周回できるコースもありますが今回は時間の都合上、旗坂キャンプ場から割山大滝までの往復コースとなります。ここは四季を通して自然を満喫でき楽しめる場所ではありますが、あまり訪れる人も少なく特に冬の時期にここを歩く人はほとんどいません。もちろん道は全く見えませんし、登山と違ってとにかく上に向かって進めばよいというものでもありませんから、よっぽど地形をわかっているかルートファインディング技術のしっかりしている人でないと周回はもちろん割山大滝まで行き着くこともなかなか難しいのではないでしょうか?
今冬は積雪量は多かったのですが、2月中旬からの好天続きとそれ以降の降雪がなかったせいで、例年よりは今時期の積雪量はかなり少なかったのではないでしょうか。それでも夏道は見えていませんから、Kさんの先導で道のない雪面を歩いて行きます。この季節に夏道を忠実に辿るとすれば何ヵ所かの危険が予想されますので、事前にルート選定はKさんを中心に雪崩の危険性のあるすりばち沼手前の急斜面のトラバースと、すりばち沼の木道は避けるように考えていました。木道の上の積雪が外側に張り出してちょっと油断すると沼に転落の危険性があるからです。
すりばち沼の手前には都合よくブナの木の上に熊棚などもあり、案内標識に残されたツキノワグマのいたずら痕などを観察し、この周辺の自然の濃さを知ってもらうこともできたと思います。

ほぼ予定通りに目的地の割山大滝に到着。桑沼からの伏流水を年間を通して凍りつくことなく落とし続ける積雪期の割山大滝を眺めることができました。さて、この滝ですが結構な水量がありますが、上部を横切る桑沼林道上には南北の丸松保沢を渡る以外の沢はありません。それではこの水はどこから流れてくるのでしょうか?滝の脇の案内板には「どこから来たのか絶えざる流れ・・・」という表記があります。・・・ご心配なく・・・ちゃんと確認してますよ!どこから来るのか滝を登って沢を遡り、確認してきたレポートをまとめたページはこちらをご覧下さい。

 

 

しばしの休憩の後、来た道を戻るわけですが帰り道となると少し余裕も出てきて、こんな場所を確認することができました。我々が歩いてきたところを横切るようにカモシカの足跡が残っていました。その足跡を辿って見ると・・・雪が解けて露出した地面から出ている草の根と樹皮をカモシカが食べた痕。ここでカモシカが食事をしたのは昨日あたりだったのでしょうか?
山を歩く時にいつも思うのですが、ただ歩くだけではなく3段階の楽しみを持つといいですね。最初は周りの景色を眺めて楽しむ、そしてよく見る(観察する)さらにちょっと想像力を働かせてみてください。たとえばこのカモシカは、あの斜面を下って来たところで「おっ!あそこに食べられそうな草の根が出てるところがあるぞ!」って思って草の根を食べた、そして「うーん、ちょっと食べ足りないな〜」って思って根っこの樹皮も食べてしまった。(逆かもしれませんけどね)どんな格好で食べていたのか?風のざわめきにちょっと顔を上げ耳と鼻をピクピクさせて様子をうかがい、そしてまた食べ始めた・・・。
そんなことを想像してみると、単に食痕を見たというだけではなく、そのカモシカと同じ場所、同じ空気を共有できたような気分になってくるものです。そして家にいる今もそのカモシカへの想いは広がってゆきます。暖房の効いた部屋でビール片手にパソコンに向かっている今も確実に升沢遊歩道周辺にそのカモシカは生きているのです。

トレッキングの後は台ケ森温泉の山野川旅館で、熊肉や鴨肉、バッケ(フキノトウ)の天ぷらやユリネの入った茶碗蒸に岩魚の一夜干しなど普段食べることができない珍味・山の幸をおかずに大和町名産のマイタケご飯でお腹いっぱいのご馳走を食べて温泉にも入り、今日も船形山とご一緒させていただいた皆さんのおかげで楽しい一日を過ごすことができました。


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