荒廃する日本の森

いま日本の森は、奥山に僅かに残る天然林を除き、ほとんどが荒れています。遠目には緑濃く見える森も、近くに寄れば陽もささない暗いスギ林だったり、ツルやヤブが伸び放題だったり、笹だけが繁茂していたりします。
かつてブナ林などを伐採して人工林化する、拡大造林の時代がありました。しかしその後、世界中から輸入される安い外材に圧倒され材価は低迷し、手入れをしても採算が合わず、人工林は放置されました。

昨年秋、東京で開かれた『第18回・日本の森と自然を守る全国集会』には、林業家や住宅メーカーの幹部、製紙会社の幹部なども参加し、シンポなどを通じて、こうした現状の再認識と再生への見通しが語し合われました。
国内では今、木材需要の80%以上を世界中からかき集める外材に依存しています。50%余りは建材と合板、40%余りがパルプ・チップ用材です。

その昔は建主と大工さんの直取引であった木造住宅も、国民の二一ズの変化か政策的誘導なのか、今や住宅メーカーが大量供給する時代となりました。外材を集成した均質規格材使用のプレカット工法が主流となり、筋やねじれの多い国産材は敬遠されるのだそうです。
(そればかりか、文芸春秋06年2月号によれば、98年の建築基準法改正は、米国の「年次改革要望書」 に応えた、米国産木材の対日輸出拡大を後押しする規制緩和を含んでいるようです。)

採算が取れず手をかけない。だから良材が生産されずますます使われない。日本の林業は、こうした悪循環に陥ってしまいました。パルプ材もまた、小ロットの山林が点在する国内より、海外の広大な平地林から大量搬出した方がコストが安いという話でした。

最近の木造住宅は、寿命僅か30年として設計されているそうです。住宅までも使い捨ての時代です。30年後、スクラップと化した廃材はどこへ運ばれるのでしょうか。集成材の接着剤はどのように化学変化しているのでしょうか。

日本の山林の存在価値が、産廃処分場のみとなり、廃材や焼却灰で埋め立てられ、融解した化学物質が地下水を汚染する悪夢の時代がやって来ないよう祈るばかりです。

(2006.2 鈴木 T)


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