船形山から伏流水の行方を追ってU

6月8日、かねてから自分ののテーマであった「氾濫原の水はどこへ行くのか?」の完結を目指して、船形山麓H沢周辺を探索してきました。「氾濫原」とは、北泉が岳と三峰山の中間の長倉尾根を源流とする、長倉沢と大倉沢が合流したあと大倉山(933.9m)の北側で沢の水が全て地中に吸い込まれてしまう場所です。春先に行ってみると、船形山の雪解け水と周辺のいたるところから出ている湧き水が行く筋もの沢を作り、そして一筋に合流したあとある場所で轟々と音を立てて地中に流れ込んで行くのを見ることが出来ます。

過去数年に渡り周辺を歩き周り、氾濫原の水は荒川の北と南の丸松保沢出会いの少し下、内水面水産試験場の取水場の沢であることは分かっていましたが、この沢の源頭まで歩き詰めたことが無かったのです。ようやっと機会を作って渓流釣り仲間のTさんと一緒に沢を遡行してみた結果は・・・?

荒川との出会いはちょっとした滝になっていて、けっこう水量もあるので、前に行った割山大滝の源頭と同じような感じで、湧き水が轟々と流れ出ているものとばかり思っていましたが、予想に反して沢を100mも遡行しないところで、いつのまにか水が無くなってしまうというあっけないものでした。滝の上に幾筋かの湧き水が流れ出ており、さらに進むと今度はかなり大きな苔むした岩が積み重なっており、その下から水は流れてきていますが、たいした量ではありません。この大岩群を超えれば再び水の流れが有るかと思いましたが、はっきりとした源頭を特定できるには至りませんでした。

しかし、それよりもすごいものを見つけてしまったんです。それは、標高600m付近の風穴の存在でした。大岩を越えて大変な藪を沢のような窪地を頼りに歩いていくと、いかにもここに風穴がありますよ、というような地形のところで冷たい空気の流れを感じたのです。岩の隙間に手をかざしてみればまさに冷たい空気が流れ出てくる風穴でした。なんたって、標高1000m以上でも雪のほとんど消えた、6月8日に600m前後の桑沼林道の下で雪の残っているところが有ったんですから・・・。もうびっくりでした。

でも、これでもまだまだ、もっとすごいものを見つけたんです。それは、太古のロマンを感じさせる地中滝の存在でした。氾濫源とヒラコ沢の中間地点、前述の沢状の窪地をさらに詰めて桑沼林道を越え、さらにヤブコギを続けたところに有りました。今日は蒸し暑くなりそうだからと、冷えたビールを持参していたんですけど、一休みしたところも風穴になっていて吐く息が白くなるような気温10℃以下のところだったので、汗も引いてしまいビールを飲む気もなくなって私がタバコ吸っているときにそこら辺を歩いていていたTさんが、「水の流れる音がする」っていうんです。足場が不安定な隙間もかなりある岩のゴロゴロしてところをしばらく探して歩いたら、岩の隙間からかなりの水量があるような激しい水の流れる音が聞こえる場所が有ったんです。まさに滝の流れの音です。その昔、火山活動によって大倉山の岩盤が流れ出る前にはそこにきっと滝があったのでしょうか? 気の遠くなるような時間をかけて落ち葉が堆積し土になり、木が生えてそこに沢の面影はなくなってしまいましたが、地中には脈々と流れ続ける沢があったのです。何の目印も無く、ただのヤブの中に存在する地中滝に太古のロマンを感じずにはいられませんでした。

上の写真の水が消えるゴーロ帯 標高600m前後の風穴 地中滝(水は見えず音だけ)

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