船形山から深山渓谷の便り

5月25日船形山山麓の南丸松保沢に行ってきました。この沢の右岸に流れ込む、とてもきれいな苔むした沢の話は聞いたことがありましたが、今までなかなか機会がなくて行ったことがなかったんです。長倉沢とこの南丸松保沢にはさまれた三峰山から大倉山に向かう尾根筋(二段峰)には、水脈が走っておりこの尾根の南北には岩盤の隙間から流れ出る湧き水がけっこうあるんです。どこの湧き水もかなり冷たく、どこまでも純粋なおいしい水です。この尾根の上部は、ブナ伐採から免れ豊かな自然が残っているところで、林道周辺にある車で手軽に行ける水汲み場と違い、残留除草剤などの心配がなく飲める水です。船形山山麓でも林道脇にかなりの人が汲みに来る水場があります、見える範囲はブナ林がありますが、少し奥に入ると伐採跡地に杉やカラマツの造林地となっているところもあります。一般にブナ伐採跡地では、杉を植えてもササの成長が早いので、スギの成長が悪くなります。そこでササを枯らすために大量の除草剤が散布されたのです。山に来て汲む水は直接塩素の臭いがしないので確かにおいしく感じますが、その上流部では数十年にわたって「デゾレート」などの塩素系化合物、ダイオキシン発生のおそれがある除草剤が散布されていた可能性があるんです。

イワナと遊びながら上流部を目指します。ポツリポツリと釣れてくるイワナは塩焼きにするとちょうど良いサイズで、家族分5尾だけキープしました。イワナの魚影が薄くなってくると、山岳渓流の様相が強くなってきます。この辺からは釣り竿を三脚に持ち替えて写真撮影の方をメインにすることにします。沢の周辺にある巨木はサワグルミが多いようで、上部にはブナの巨木も見えます。このあたりに住み着いているツキノワグマの「松五郎」もこのブナの実を食べているのでしょうか?「松五郎」を直接見たことはありませんが、以前からよく目撃されているけっこう大きなおとなしいクマだそうです。こちらからは見えませんでしたが、むこうは私のことをどこからか見ていたのかも知れません。いつか会って見たいものです。
しばらく行くと美しい新緑の苔に覆われた小沢が右岸から流れ込んできます。本流の水量は極端に少なくなりましたが、こちらは水量が安定してるらしく豊富な冷たい水を落としています。沢すれすれに飛んでいった小さな黒っぽい鳥はカワガラスだったでしょうか?上流部に目を向けると、緑色の厚いじゅうたんを敷き詰めたような水の廊下が真っ青な空に続いているように感じます。岩に触れてみると苔はかなり厚く岩のゴツゴツした感触は全くありません。これほどの厚みがある苔むした沢を私は他に知りません。一体どれほどの時間がこの苔のじゅうたんを作り上げたのでしょうか?生活に追われ、時間に追われ日々せわしなく動き回っている私達は、なんてちっぽけな存在なんだって思わさせられる風景でした。


(戻る)               (トップページへ)

inserted by FC2 system