船形山から新緑渓の便り

5月4日、Tさんと一緒に船形山麓吉田川源流近くにあるマンノウを見に行ってきました。2月に黒森から見たけっこうな断崖を抱える無名748m峰の下を流れる沢に下り立ってみたくなったんです。嘉太神ダムの上流部林道を高倉山北斜面を目指してどんどん進むと、杉の大規模伐採地に行き当たります。2年前までは暗い杉林でしたが、今はすっかり明るくなり新たに植樹された杉が大きくなるまでの間は、カモシカの恰好の場所になることでしょう。私もカモシカはよく見に行きますが、観察場所として一番適しているのが、幼齢造林地なのです。植樹された樹木が日当たりを遮るまでの下草がカモシカの食欲を満たしてくれるからで、幼齢造林地をナワバリとしているカモシカは半分以上をそこで食餌しているとの報告もあります。別なところですが以前同じような場所で、一度に5頭のカモシカを観察したことがありました。母親の近くに当年子、ちょっと離れたところに2年子、周りの森から飛び出してきたのは、ナワバリに侵入してきた若い雄を追いかけた父親カモシカでした。野生のカモシカでも何回も見ていると家族構成やそれぞれの固体識別ができるようになって、偶然出会うものと違う見かたができるものです。そのうちここにもゆっくりとカモシカを見に来ることにしましょう。さて、車をはさらに奥に進めると、右手に吉田川本流が深い谷となって見えてきます。車止めから沢に向かって斜面を下ると、眩しいくらいの新緑の中から沢音が聞こえてきて、これからの源流行の期待が高まります。しかし、実際に沢に下り立ってみると近くには全く不似合いなコンクリートの砂防ダムが私達やイワナ、そして日本の豊かな自然の行く先を拒絶するかのようにそそり立っていました。「災害から国土を守る治山ダム」なんていう標識を見ますが、こんなところに作る砂防ダムこそが人災といえるのではないでしょうか?土石流が砂防ダムをジャンプ台としてさらに勢いを増したなんてこともあるんです。(95年9月の台風26号による赤倉橋大崩壊)

砂防ダムを乗り越えしばらく歩くと、やっぱりそこは山岳渓流の様相を持つ美しい沢でした。沢岸には小さな花が咲き、両岸から一番いい時期の新緑が張り出しています。沢音とゴジュウカラやセンダイムシクイなどの鳥の鳴き声がいっそう新緑の渓の雰囲気を盛り上げてくれます。遠くからはツツドリの声も聞こえます。チビイワナと遊びながら上流を目指しますがこの沢は、水そのものはあまり良いとは思えませんでした。川虫も少なく、イワナも大型は期待できないでしょう。釣り上げたイワナは全部リリースしました。

748m峰の下部に近づいて来たようで、左岸に崩壊地が目立ってきました。さらに進むと右岸は真っ黒い岩盤がオーバーハングしていて、目の前には落差30mくらいでしょうかマンノウ滝が現れました。地元のベテラン(年配者)からこの滝の存在は聞いていましたが、見るのは初めてです。最近の地図には滝の表記がされているのもありますが、数年前までは地形図に記載されていない幻の滝として、マスコミにも紹介されたこともあったそうです。滝の前に立ってみると右岸の岩盤が妙に張り出して見えて大きな黒いすりばちの中に入り込んだようでした。左岸を巻けば乗ッ越せそうな感じですが、4月の沢歩きの時に落石を起こしてケガしたこともあって、今日はここまでとします。滝の上部にはシロヤシオが僅かに花をつけていました。

吉田川マンノウ滝。けっこう迫力
ありました。
新緑と残雪の渓。午後から小荒沢
に入りました。
船形山登山道、鳴清水から聞こえる
のは、ここ小荒沢の沢音です

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