船形山から伏流水の行方を追って

4月29日、船形山の伏流水の行方探索で、升沢遊歩道内にある割山大滝の源頭を探しに行ってきました。ここは、以前からいつか行ってみたいと思っていた所でしたが、なかなか思い切らなくて行けずにいたのです。10:30に旗坂キャンプ場を出発。まばゆいばかりに輝いている新緑のブナ林の中を割山大滝目指して歩きはじめます。すり鉢沼は新緑に囲まれ、深い青緑の色がきれいですが、今日は大滝の上部でどれくらい歩くか分からないので、どんどん飛ばします。今年は雪が少なかったですけど風が強かったのか、途中にブナの大木が倒れていました。このブナはけっこうお気に入りで、今年のお正月にも写真を撮りにきた樹齢300年は越えていると思われる巨木です。斜面に根ざしてしましたが山側の根元が枯れてしまい、谷側が支えきれなくなったみたいで大きな身体を下に向けて横たわっています。倒れたのが今年の春先であれば、立っていた姿を最後に記憶に留めたのは、この私かも知れません。数百年に及び生きてきたこのブナの最後を見取ったようで、単なる倒木とは思えず遊歩道から外れ、折れた根元にのぼり立ち数百年のブナの一生を想い感慨にひたりました。

割山大滝は升沢遊歩道の案内にも桑沼方面からの伏流水を豪快に落とすと紹介されていて、桑沼林道を横切っている沢はありませんし、これだけの水量があるので僅かづつしみ出していると言うことは考えにくく、この滝の上部に伏流水の出口が必ずあるはずなのです。けれども、そこの写真も見たことがありませんし、見たことがあるという人に出会ったこともありません。だったら自分で確かめるしかないとなった次第。滝の右岸(向かって左側)はけっこう簡単に登りきることが出来ます。滝の落ち口から見下ろす眺めは豪快です。上部はミズゴケに包まれたきれいな沢となっていて気持ちが和みますが、周りはブナに囲まれた人が入らない野生動物の領域で、遊歩道の標識に残された噛み跡や爪跡からここのツキノワグマはかなり気性が荒らそうなので、熊鈴を鳴らし、時には大声を出したりしてこちらの存在を示しながら沢を登ります。流れは平坦で緩やかです。最初は靴を濡らさないように岸を歩いていましたが、上に行くにしたがってまわりのヤブが厳しくなり沢通しに歩くことになります。靴の中の水はさすがに伏流水だけあって冷たさが身にしみます。小1時間も歩いたでしょうか、ちょっとした落差を越えヤブをくぐると突然目の前が開けました。浅い流れが広がり、種類は分かりませんが見事な新緑の草本が沢一面を覆っています。両岸の樹木の間から日差しが逆光となって、緑をいっそうきれいに見せてくれます。一番いい時期のいい時間にここに来たようです。雰囲気からみて源頭は近い感じがします。予想通り数10m先にその場所はありました。先の方を見ながら歩いていたら突然沢が消えたのです。7〜8m径くらいの窪地になっていて地面の下から水の流れる音が聞こえます。伏流水の出口は2箇所に分かれていました。桑沼の真北、標高780mくらいのところでした。岩の隙間から流れ出る地中を旅してきたどこまでも透きとおった水を手ですくい口に入れてみます。生まれてきたばかりのように、限りなく純粋な水でした。この水は一体どれほどの時間を経て地上に現れたのでしょうか?一説には伏流水が再び地上に戻るのは約40年かかるとも言われています。桑沼からは直線距離で600〜700mくらいですが、数時間で一気に流れ出たのでしょうか?それとも数十年の長い旅をしてきたのでしょうか?

奥の岩の下から水が流れ出ています こちらの出口は三角の岩の下です

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