船形山から雪の丸松保沢の便り

2月3日、旗坂キャンプ場から大平桑沼林道を北丸松保沢まで歩いてきました。1月10日に腰を痛めてしまい1ヶ月ぶりの山歩きなので、バックカントリースキーでの軽いツーリングです。
沢渡の集落を過ぎ、嘉太神まで来ても路面に雪はありません。いつもならこの辺からの路面は圧雪状態なんですが、今年は厳冬期にもかかわらずアスファルトの道路を走るなんて、ちょっと変な感じです。そればかりか、内水面水産試験場まで路面に雪はなく、(除雪されていない道路わきには1m以上の積雪はありますが)まるで4月初めくらいの感じです。

内水面水産試験場の前に車を止め、スキーを履いて歩き始めますが先行者のトレールの上は全然沈まずスニーカーでも歩けるくらいです。船形山登山口から先はトレールもなく、一人静かな山歩きとなります。ノウサギやテンなどの足跡を見ながら歩いていると組板沢の脇にけっこう目立つ赤い模様を雪の上に見つけました。
ノウサギの赤小便と言われるもので、繁殖のために雌が自分の存在を知らせる為のものだそうです。今まで何度も目にしたことはありましたが、これほど目立つものは初めてでした。聞いた話だと、通常の尿より強い臭いを発し雄を誘惑するのだそうで、ためしに自分の鼻を近づけて臭いをかいでみたことがありますが、やっぱり人間の鼻では臭いを感じることは出来ませんでした。
毎年1回はイワナ釣りに入る組板沢ですが、もともと細い流れが積雪のためさらに細くなっていて水はほとんど見えません。イワナたちは、エサもあまり無い水の中で、じっと春を待っているのでしょうか。
北丸松保沢の橋のたもとで、ちょっと写真を撮ったりして休みながら河原を見ていると、ノウサギの足跡が縦横無尽についています。春には夜明け前から釣り人や山菜採り、秋にはキノコ採りとひっきりなしに人間が入ってくる山の中で、動物たちが人間の気配に怯えずに自由に動きまわれるのは冬だけなのでしょう。

ツーリングコースとしてはそのまま林道を桑沼方面に向かうのですが、今日は、北丸松保沢を少し遡行してみることにしました。橋のたもとから沢沿いの林の中を歩きます。本当はこういう場所はスノーシューが便利なんですが、履いているのはBCスキーなので何とかなりそうです。春から秋にかけては、けっこう沢遊びに入りますが、ただ眺めるだけの冬の沢もなかなかいいもんです。風も無く、木の葉のざわめきや小鳥の囀りなどもまったく聞こえず、沢の音がまわりの雪の中に染み込んでいくのが分かります。

 

 

 対岸の急斜面に誰かがラッセルしたようなトレールが見え、それを目でたどっていくと沢を渡っているようです。カモシカの足跡でした。急斜面をつづらに降りてきて、沢をこちら側に渡りそしてまた急斜面を登っていったようです。いつも思いますが、カモシカほどの登山者はいないでしょう。いつだったかも、汗だくになってヒーヒー言いながら急斜面を登っていた私たちのちょっと離れたところをカモシカが鼻歌まじりに軽々と追い抜いていったことがありました。
こんなふうに足跡を見ながら動物たちの行動を推測するのも冬なればこそのものです。

かの星野道夫さんが言っていました。自然には2種類があって、ひとつは人間が見ることの出来る自然。もうひとつは人間が見ることの出来ないところで行われている自然の営み。このカモシカの行動は、誰も見ていないわけですから後者に入りますよね。でも、私は足跡を見ることによって、想像することが出来ます。おそらく丸一日以上は過ぎていると思いますが、カモシカが沢を渡ったのは、私が仕事しているときだったんでしょうか?それとも家でご飯を食べているときだったのでしょうか?それはわかりませんが、間違いなくここを歩いたんです。今、こうして家でパソコンに向かっているとき、カモシカはいったい何をしているのでしょうか・・・


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