船形山から森の再生・復元を願いながら

7月15日「船形山のブナを守る会」の本年の活動指針「森の復元のお手伝い」体験林業に参加してきました。この「ブナの便り」の中でも度々記述していましたが、いよいよ作業に入ります。当日は、酷暑の中でもあり、今までの観察会等と違って相当の重労働が想定されるため参加者数の少なさが心配されましたが、集合場所に着いてみれば、会の精鋭メンバー約30名が集まっていました。

今日の作業は、2班に分かれて@小荒沢林道支線、造林地(58林班へ2)における除伐作業A升沢登山コース一群平付近(60林班に1)の笹刈りです。笹刈りについては、過去に何度か触れましたが、ブナ伐採地の笹を刈りることによって、ブナをはじめとする広葉樹の稚樹に陽を与え、成長を促進すると言うのが目的です。何故、除伐かと言うと、当会の小関代表世話人が「船形山ブナ通信」に載せている以下の一文に集約されます。

*****6月初旬大和町のKさんと小荒沢林道を入りブナ等の幼樹が笹に覆われているところを探したのですが保護区として残されたブナの森も立派なブナの森になっていました。森の偉大さをあらためて感じ、隣の人工林が哀れに見えました、林野庁による拡大造林計画は山をめちゃめちゃにしてしまいました。その後始末になるかもしれませんが、せっかく植えられた杉を立派にしてやりたいという思いが強くなりました。ここは標高も低いし、風当たりも弱いので手をかければなんとかなるんじゃないか、Kさんも同じ思いでした。
 スギが主体ですが広葉樹もある美しい混交林をつくってみたい。私達のこの思いが林野庁の拡大造林計画による人工林のあり方(ブナの森の拡大、人工林が成長できる地域の設定)の見直しを要望したい。また日本の林業を国民全体で考える時期に来ていると思います。外材に頼っている日本は地球破壊国です。*****

作業に先立ち、笹刈りの先輩である「仙台のブナ林と水・自然を守る会」の木幡さんから、今までの経験を元にした作業上の注意やハチ対策などの説明を受けたあと、各自鉈やのこぎり・鎌などの道具とハチ対策の防虫ネット、ハチよけスプレーと毒液吸出器を手に現場に向かいます。私たち除伐班は、林道を車で移動ですが、笹刈り班は一群平までの登山があるので大変です。

除伐作業地はけっこうな急斜面で雪の影響だと思いますが、杉や広葉樹などすべてが根元から曲がっていて、しかも過去に1回くらいしか手が入っていないとの事で、すぐ隣にいる人も見えない猛烈なヤブとなっていました。中には、根元から曲がったまま斜めに延びている杉や著しく成長が遅れていると思われるものがけっこうあり、このような、目的樹木であってもその形質が不良で、将来とも保存育成し得ないものを除伐し、造林木の成長促進に必要な十分な土地と空間を与えます。
 本来の除伐は広葉樹はすべて除伐してしまうものですが、私たちは森の再生を願ってのものですから広葉樹も陽があたり成長の期待ができるものは残すことにしました。左の写真は、作業開始からそれほど時間がたっていませんが、各自手の届く範囲を除伐しただけで、ご覧のとおりの日差しを受けることが出来るようになりました。急斜面であるため作業をするための足場を確保するのもやっとで、休憩のため上に登るのもへとへとになってしまいました。こんな場所に杉の造林地を作っても手入れは大変だし、何より雪のために根元が曲がってしまうのは林業の素人である私でも容易に想像できます。それだけ林野庁の拡大造林計画というのはずさんなものだったのでしょうか?午後2時頃までの作業で予想以上の面積を除伐することが出来ました。私たちが少人数でしかも手作業で出来る範囲は限られています。でもほんの少しであっても森の復元の手伝いが出来たはずです。だから参加したメンバーもものすごい暑さと重労働にもかかわらず、次の作業のことやこの林の将来について本当にいい笑顔で話し合っています。

さて一群平の笹刈り班ですが、この暑さの中道具を持っての作業現場まで登山道の登りは相当きつかったようです。現場(一番上の写真)は、杉の造林地に隣接しているところで、ここの造林地も急斜面であり下刈り作業も困難なことから、笹を枯らすために除草剤が散布されたのでしょうか造林地に接しているブナの立ち枯れも目立ちます。笹刈り班のKさんの話によると笹の中にもブナをはじめ広葉樹の幼樹がありましたが、やはり日当たりが悪いせいかブナの幼樹も蔓のように細くて情けないものだったとのことです。こちらは、広葉樹の幼樹を笹の中から探して周りの笹を刈るために剪定バサミやカマで一本一本丁寧に作業する必要があります。炎天下の中大変な作業だったと思います。

 



上の写真は周りの笹を刈って十分に日差しを受けられるようになった広葉樹(オオカメノキ)の幼樹と笹刈り跡地にブナの森を作るための母樹となるであろうブナです。この地にブナの実が落ち、芽が出たらその稚樹に陽を当てるためまた笹を刈ります。それを数年間繰り返し幼樹が笹の背丈より伸びてくれば、あとは自然にまかせ森の復元を待つだけです。除伐も笹刈りも、手をかけるのは数年がかりだし、更にこの地がまたブナの森に戻るまで相当の年月がかかることでしょう。ブナの時間から見れば人間の時間なんてちっぽけなもので、今日参加したメンバーは誰一人として復元したブナの森を見ることが出来ません。でも、皆さんとても希望に満ちた顔をしていました。数十年、数百年後のブナの森を夢見て・・・。


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